第1回 いとしまサイエンスキャラバン
「サイエンスカフェ」というのをご存じだろうか。
私もつい最近まで知らなかったのだが、日本中でサイエンスカフェを開催した日本学術会議のサイト(http://www.scj.go.jp/cafe/web-content/)によると、「街中のカフェなどをお借りして、アットホームな雰囲気の中、科学者と参加者が直接会話を楽しむことを目的に開催されて」いるものがサイエンスカフェらしい。ポータルサイト(http://cafesci-portal.seesaa.net/)まで出来ていて、東京、関西、東北、北海道では盛んに行われているようだ。
●糸島でサイエンスカフェが生まれるきっかけ
九州とは縁の薄い「サイエンスカフェ」を知るきっかけになったのは、今年の5月に開催したロレアルワークショップである。参加者からの申し込み電話で「サイエンスカフェはまだ福岡で開催されていないが、ロレアルワークショップもサイエンスカフェに似ているので、ぜひ福岡でもサイエンスカフェをやってほしい」と言われ、カフェのチラシをわざわざワークショップの会場に持ってきてくれたのだった。
糸島地域に移転を始めた九州大学と地元とのネットワークをなんとかしてつくれないかと日々思っていたので、科学を身近に感じてもらうことから始めるサイエンスカフェのコンセプトは非常にいい取り組みだとその時に思った。
ちょうどそのころ、福岡県と前原市・志摩町・二丈町が糸島地域学術研究都市協議会という組織を立ち上げ、九州大学と地域のつながりをつくるために交流の場が必要だという議論をしていた。サイエンスカフェを糸島地域を巡回させるイメージで「サイエンスキャラバン」という企画を提案したところ、すぐに採用され、さっそく実施されることになった。
●あっという間に実行チームが生まれる
サイエンスカフェのそもそものコンセプトは、“科学者と参加者が直接会話を楽しむこと”である。“街中のカフェ”があまりない田園地域の糸島で、単なる講演会ではない雰囲気をどうしたら作れるか、というのは非常に悩ましい問題だった。
企画会議の際「九州大学の若手の先生に参加してもらったら、相互に話しやすい雰囲気になるのではないか」という話になった。ロレアルワークショップの際に紹介されて知り合いになっていた九州大学のバリエタスという若手研究者グループに相談にいったところ、そちらでも「ばりカフェ」というサイエンスカフェを企画しているところで、連携してやりましょうという話になった。さらに九州大学の知財本部や前原市の商工会、糸島まちおこし実行委員会などの各グループからの協力も得ることができ、気がつけば10月に1回目を開催することになっていた。
●地域とのコミュニケーションを深めるためのアイディアがいろいろ生まれる
やる気のある人たちが、一つの目的で集まると本当に面白い。「糸島と九州大学との間に共同研究や新しい産業につながるような場をつくる」というのが大きな目的なので、糸島の中心産業は農漁業だから「自然の恵みを科学する」というテーマでとりあえず1年目は3回ほどをやってみようということになった。その後は、「複数の先生の話があると議論の幅が広がるのでは?」、「先生の発表は短くして、会場との討論時間を長くしよう」、「先生方の話をわかりやすく伝えるモデレーターを入れよう」、「せっかくだからパネルで九大の宣伝をしよう」、「飛び込みのプレゼンも受付けよう」という形で、どんどんアイディアが出てくる。
最初の講師を引き受けてもらった大貫先生と清水先生は、食品の成分を発見したり、分析したりするプロなので、「機能性食品のへルシアを例に使うとわかりやすいのでは?」などと話が膨らんだ。「糸島の人は奥手なので、なかなか手を挙げて質問しないのでは?」という問題に対しても、途中に休憩を入れて、その間に質問を記入してもらって、それをベースに意見交換をしようということになった。
●60人を超える参加者があったサイエンスキャラバン
開催が決まってからの悩みは、どれくらいの人を集めたらいいのだろうかということだった。サイエンスカフェは、そもそも科学者と参加者が直接会話を楽しめることを目指しているので、どちらかというと20~30人規模のものである。しかし、せっかく九大の先生の話を聞ける場であるし、地元産業の事業者と先生がつながるきっかけにしたいという思いもあって、50人を目標にすることで落ち着いた。結果的に1回目は、60人を超える参加者があったのだが、講師の先生方から「会場と一体感があって非常に楽しかった」と言ってもらえたので、サイエンスカフェの意義も失わずにキャラバンを実施できたのはないかと思う。
●第1回のテーマは、健やかになる「辛味」と「苦味」
キャラバンの実施に至るまでの経緯の話が長くなってしまったが、実際の内容も非常に面白かった。話のテーマは、健やかになる「辛味」と「苦味」である。会場には唐辛子と霊芝の粉を配り、みなさんに辛味と苦味を体験してもらうことから始まった。
大貫先生は、マウスなどを使って、植物の成分がどのような効果を持っているかを計測したり、評価することを行っている。その中で、企業との共同研究によって、唐辛子の「辛味」成分がダイエットに効果があるという成果が得られ、製品化もされたそうで、その発見に至る経緯の話や辛くない唐辛子でもダイエット効果が得られるといった話をしてもらった。
一方清水先生は、身体に効く“成分探し”のプロフェッショナルである。もともと植物の研究をしているのだそうだが、たまたま知り合いの人との飲み会で、霊芝を焼酎につけて飲む人がいて、身体にいいから研究してほしいといわれたことがきっかけで霊芝の研究を始めたのだそうだ。その結果、骨粗鬆症に効果のある成分を発見したということで、“人の噂を科学する”ことで、研究成果が得られているという話だった。
ちょうど二人は、“健康に効く成分を発見する人”と“その効果を計測・評価する人”なので、後半は、糸島の野菜や植物が身体にいいといった噂がないだろうかという話で盛り上がった。その他にも、「どくだみを煎じて飲むとかゆみ止めになる」という話や「びわの葉が腰痛に効く」といった話などが出てきて、先生たちもどのような成分の効果か、想定しながら答えていただいた。
●インターネットも活用して情報配信を
質問も記入式にしたおかげで、大量の質問をいただいたのだが、逆に回答する時間が限られていたりと、なかなかスムーズに進行できないところもあった。ただ、企画実行チームでは「トライアンドエラーでやっていこう」といっているので、その問題はインターネットを活用して配信することで対応しようという話もしている。まだサイトは立ち上がってはいないが、第2回を11月末、第3回を2月と行っていく予定なので、今年度中に実現したいというのが今のところの目標である。
次回は耕作放棄地をテーマに志摩町で行われるので、興味関心を持たれた方はご一報ください。(ほんだ まさあき)
