11/11 いとしまサイエンスキャラバン2008
今回の背景
いとしまサイエンスキャラバンは、九州大学の伊都地区へのキャンパス移転に伴い、科学を通じた「九州大学」と「糸島地域」の出会いの場・ネットワークづくりをテーマに、「大学の研究ってどんな内容なの?」という興味から、「科学ってむずかしい?」と素朴な質問まで、大学の研究者と糸島地域の方々が向き合い、話し合うことで、「科学」を通じて九州大学をもっと身近に感じてもらうために、2006年より行われている。2006年は「食・農」、2007年は「環境にやさしい科学」といったキーワードを掲げ、そのキーワードに合った九州大学の研究者各2名もしくは3名に講演してもらうことで、九州大学で行われている研究を糸島地域の方々により分かりやすく接する場作りを行ってきた。また昨年は九州大学知的財産本部が中心となり、科学技術振興機構 平成19年度地域科学技術理解増進活動推進事業「調査研究・モデル開発」に採択され、地域と科学技術とを結ぶ新たなモデルとして活動を行った。計6回のいとしまサイエンスキャラバンを行い、総参加者数は約600名近くにも上っている。今年はキーワードを「科学で探る糸島の文化」に設定し、糸島地区の文化的・歴史的な側面を中心に地域の人々と大学を繋ぐサイエンスキャラバンを行う予定で、今回は2008年一回目のいとしまサイエンスキャラバンとして行われた。
いとしまサイエンスキャラバン2008について
これまでいとしまサイエンスキャラバンを通じて、大学と地域のネットワーク作りから、大学の研究への展開のモデルも検討されており、実際、「地中熱を利用した省エネプロジェクト」「芥屋カブの研究」「健康な土・土壌の研究」「牡蠣殻プロジェクト」など、糸島地区ならではの研究が立ち上がり発展している。
今年は、一昨年より活動を行ってきたメンバーの入れ替わりがあり、新しい運営メンバーによる新たなサイエンスキャラバンとして展開する。
いとしまサイエンスキャラバン2008
遺跡から見た糸島の古代
・開催前
今回のサイエンスキャラバンのテーマ「遺跡から見た糸島の古代」ということで、これまで行ってきた「食と農」「環境」といった視点とは別の角度からのテーマ設定ということもあり、どのような変化があるだろうと期待して、会場入りした。
まず会場受け付けにて手渡される配布物として、サイエンスキャラバンに関するアンケート、スピーカーの先生方への質問を書き込むポストイット、それを書くためのペン、シール4つ、そして下敷き代わりのフォルダをセットにしたものが配られた。昨年より行われた会場入り口でのアンケートボードは今年も行われ、「年齢・性別」「お住まい」「職業」「参加歴」の4つのボードに各自シールを貼り、回答して席に着くといった流れで、受け付けが進んだ。事前の受け付け段階で70名以上の申し込みがあったという話を聞き、いつも以上に参加者の期待が大きいように思う。あとから分かったことだが、今回の参加者は、前原市にある「伊都国歴史博物館」に関わっているボランティアの方々、またそこから口コミ等で興味を持たれた方が多数来場しており、「糸島の歴史」に興味のある方々が事前申し込みをされていたようだった。
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| 写真1 アンケートボード | 写真2 アンケートボードに回答中 |
・今回のスピーカー
今回のいとしまサイエンスキャラバンのテーマである「遺跡から見た糸島の古代」に対して、弥生時代から古墳時代にかけての遺物・墳墓から、その時代の人々の生活・社会に関する研究を行っている九州大学人文科学研究院の辻田 淳一郎准教授、そして電気・電磁波などを利用して物理探査法により遺跡・地下資源を探査している九州大学工学研究院の水永秀樹准教授がスピーカーとして招かれた。
糸島半島は、あちらこちらに古墳があり、また九州大学伊都キャンパス内にも古墳が残っており、糸島半島の人々だけでなく、九大関係者にとっても、興味のあるテーマ、そしてスピーカーの先生方であるといえる。
・いとしまサイエンスキャラバンスタート
いとしまサイエンスキャラバンがスタートする頃には、100名以上準備されていた席はほぼ埋まり、期待の中スタートした。
今回からいとしまサイエンスキャラバンのモデレーターは九大知的財産本部の槐島(げじま)コーディネーターとなり、モデレーターより趣旨説明、今年のサイエンスキャラバンの紹介、スピーカーの紹介があった後、辻田先生から「糸島の古墳文化」の講演が始まった。
まず「古墳とは、古墳時代とは」といった説明からスタートし、日本の古墳の分布状況、1世紀から8世紀にわたる日本の歴史と古墳時代の繋がりが紹介された。古墳の研究を行うことで、その時代の、その地域の交流や社会の成り立ち、生活様式などを見ることができると説明があり、その後、糸島半島にある数々の古墳を時代の流れに沿って、紹介いただいた。資料として残っているイラストや写真と現在の古墳の様子をうまく織り交ぜながら紹介があり、参加者の身近にある古墳を分かりやすく捉える事ができたのではと思う。中にはしっかりとメモを取っている参加者もおり、興味深く聞き入っているようであった。後半に糸島にある古墳の時間的流れとその数の推移が、他の地域の様子と異なる点を挙げられ、そこから世界の歴史的背景との関連などを紹介され、身近にある古墳から世界の歴史へと繋がっていく話が、まさに「歴史とロマン」といった印象を受けた。
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| 写真3 辻田先生による講演 | 写真4 メモをしっかりとる参加者 |
次に水永先生より「伊都国王墓を探査する」と題した講演が行われた。
「遺跡探査の歴史」から「探査に使われる方法」では、磁気・電気・電磁・地中レーダーといった手法が紹介された。実際に地中レーダーではどのように地中が見えるのか、また地中レーダーの原理として「やまびこ」を例に分かりやすく説明があった。その後、実際に井原鑓溝遺跡にて、地中レーダーを使った探査を行い、その際の探査結果、また電気探査によって得られた結果との比較も紹介された。また最新探査状況として、9月に行った探査結果も紹介があり、現在進行形の調査にも触れることができた。
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| 写真5 水永先生による講演 | 写真6 満員の会場 |
2人の先生方からの講演終了後、休憩に入る前にモデレーターより参加者からの質問に関して説明があった。今回は受け付けで配られたポストイットに質問を記載し、それをスクリーン横のパネルに貼ってもらうという事だった。休憩に入り、各々、質問を記載し、パネルに貼りだし、スタッフによって集められた質問内容からグルーピングを行われた。そのグルーピング中、参加者が待つ時間があり、若干間延びした部分もあったが、その休憩中に伊都国歴史博物館のチラシが配られ、それに目を通している人が多々見られた。これまでは受け付けの際にチラシ等もまとめて配布していたが、より効果的に目を通す方法として、休憩時間に配布することも有効な手段であるのではと感じた。
休憩終了後、アンケートボードの結果の紹介をはさんだ後、グルーピングされた質問紙からモデレーターによって、各先生方に質問をおこなった。質問は主に講演内容に関するものが多く、「糸島に古墳が集まっている理由」「(発見された)鏡が割られていた理由」「地中レーダーの精度」「9月の調査の進捗状況」「石油は見つけられるのか」など挙がっていた。ただ質問によっては、まだ分かっていない事も多く、それに対しては講師の先生は素直に分からないと答えており、やはり歴史は深いと感じる一幕だったと思う。最後に両先生に「なにがおもしろいのか?」という質問に対してはお二人とも「分からないところが出てくるところがおもしろい」と答えていたのが印象的であった。
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| 写真7 質問ボードから質問するモデレーター | 写真8 回答する先生方 |
いとしまサイエンスキャラバン2008「遺跡から見た糸島の古代」に参加しての感想
今回のサイエンスキャラバン2008において、“科学で探る糸島の文化”をトータルテーマとし、今回その第一弾として「遺跡から見た糸島の古代」ということで、どのような変化が見られるか期待していたが、アンケートボードの「参加歴」にて、初めて参加した方が6割にも達しており、これまでのテーマと違うテーマ・内容を設定することで新しい参加者を獲得することができた良い例だといえる。また参加者の中には、歴史に興味のある地元の中学生もおり、こういったニーズに対してもしっかりと応えていく必要がサイエンスキャラバンにはあると感じた。そういった意味でも新しい参加者を含めて100名もの参加があったということは広報として、いとしまサイエンスキャラバン専用のHPやチラシの配布、地元の広報紙でのお知らせなどで情報発信がしっかり行われていた結果であり、またこれからも発信の継続が必要だと思う。
講演において、スピーカーがスライドを指し示す場面で、PCのマウスを使って指している場合があったが、会場からはかなり見づらく、また参加者層も鑑みると検討すべき点であると感じた。また今回、講演と質問の中で、参加者が発言する場面がなく、「参加」というよりは「聴講」しているという感が否めなかった。100名もの参加者の声を拾うことは運営上、難しいという点はあるが、講演の中で、スピーカーから参加者に意見や挙手を求めるなど、質問紙によるやりとりだけではない、コミュニケーションがあると良いのではと感じた。
講演自体の内容としては、それぞれの先生方が分かりやすく資料を作られており、また市島地域の情報も入っていることで地域の参加者もなじみやすかったのではと思う。
講演中にスピーカーの説明や資料をメモしている参加者が見受けられたが、その中には、配布したアンケート用紙に書き込んでいる方もいた。これは熱心に聴いている方からのアンケートを得られないことになる可能性もあり、メモ用紙の準備等が必要かも知れない。
今回のサイエンスキャラバンから参加された人も含めていとしまサイエンスキャラバンの新しいテーマでの活動は上手くスタートしており、糸島地域の人々、福岡の中で、より認知され、九州大学との連携がよりスムーズになることを期待したい。
九州大学 ユーザーサイエンス機構
特任講師 江藤 信一

