第2回いとしまサイエンスキャラバン2007
今回の背景
いとしまサイエンスキャラバンは、九州大学の伊都地区へのキャンパス移転に伴い、科学を通じた「九州大学」と「糸島地域」の出会いの場・ネットワークづくりをテーマに、「大学の研究ってどんな内容なの?」という興味から、「科学ってむずかしい?」と素朴な質問まで、大学の研究者と糸島地域の方々が向き合い、話し合うことで、「科学」を通じて九州大学をもっと身近に感じてもらうために、昨年より行われている。 昨年は「食・農」といったキーワードを掲げ、そのキーワードに合った九州大学の研究者に講演してもらうことで、九州大学で行われている研究を糸島地域の方々により分かりやすく接してもらうことに成功した。2006 年度は計3回のいとしまサイエンスキャラバンを行い、総参加者数は約300 名近くにも上っている。今回は2007 年9 月におこなわれた第1 回いとしまサイエンスキャラバン2007 に引き続き、2回目のいとしまサイエンスキャラバンとして、行われた。
いとしまサイエンスキャラバン2007
環境にやさしい科学とは? ~ゴミ問題から地域活性化を考える~
・開催前
今回のいとしまサイエンスキャラバンのテーマはゴミ問題ということで、会場には牡蠣の貝殻のパネルや今回のスピーカーの一人である成岡先生の持参していただいた最新の廃棄物処理方法である“溶融”によってできた金属のサンプル、生ごみを堆肥に変える生ゴミリサイクルコンポスト“すてなんな君”などが展示され、会場に来た参加者は思い思いに見学していた。
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| 写真1 牡蠣の貝殻パネル | 写真2 展示物と「すてなんな君」 |
また今回から新たに導入されていたものが、アンケートパネルである。会場入り口にて参加者に対して「性別」「年齢」「住まい」「職業」「参加回数」「ゴミ対策の有無」をシールにて回答してもらい、一目で今回のいとしまサイエンスキャラバンの参加者の様子が分かるパネルとなっていた。その中で過去4回、すべてのいとしまサイエンスキャラバンに参加されている方が多数いた事は、運営スタッフにとっても励みになるパネルになっていた。
配布されていた資料には、今回のスピーカーの先生方のプレゼン資料の他、前回のサイエンスキャラバンの際に回答いただいたアンケートの集計結果、後半の話し合いにて使用する質問用紙、今回のアンケート、飛び込みプレゼン用の資料があった。アンケートの集計結果が配布されていたことで、いとしまサイエンスキャラバンが参加者の意見をしっかりと捉えているという表示にもなり、参加者にとっても有用な情報であると感じた。
今回のいとしまサイエンスキャラバンは、事前申し込み参加者は、約40 名あったが、当日
飛び込みの参加者を含め80 名近い参加者が来場し、会場はほぼ満席の状態でスタートした。
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| 写真3 「皆さんに聞きたい!」パネル | 写真4 満席の会場 |
・今回のスピーカー
今回のテーマである「ゴミ問題から地域活性化を考える」ということで、3名の先生にスピーカーとして、まずゴミ問題と地域との関係性に関連して九大芸術工学院の近藤 加代子准教授、実際にゴミを処理する処理場に関連して九大工学研究院の成岡 朋弘研究員、そして廃材の利用に関連して同じく九大工学研究院の菅井 裕一助教が招待された。
近藤先生は芸術工学院の環境計画部門にて、都市環境計画のひとつとしてゴミ問題を考えた地域活性化を研究活動の一つにしているということだった。成岡先生は工学研究院の環境都市部門に所属しており、廃棄物に関する研究のひとつとして廃棄物処分場の有効利用を研究されているということだった。そして菅井先生は、最近、九大工学研究院の地球資源システム工学部門に来られたようで、それまで秋田にて十和田石の採掘によって生まれる廃材石の有効利用を研究されており、九大でも糸島地区の廃材を利用した地域活性化が出来ればと考えていると話していた。
今回は“ゴミ問題”というキーワードから、それぞれフィールドの異なった先生方が招待されたが、一つのキーワードで別々の部門から先生が集まるところに、九州大学の大きさ・幅広さを感じた。
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| 写真5 近藤 加代子先生 | 写真6 成岡 朋弘先生 |
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| 写真7 菅井 裕一先生 |
・いとしまサイエンスキャラバンスタート
いとしまサイエンスキャラバンのモデレーターである九大知的財産本部の中武助教と今回サポートということで、前原SOHO ネットワークの廣川さんの二人の進行で、スタートした。
始めにいとしまサイエンスキャラバンの趣旨、これまでの流れ、本日のスケジュール等の説明があり、その中で“アンケートパネル”の結果紹介もあり、今回は60 代の参加者が一番多く、10 代が1 名参加していると紹介された。その後、各先生方からのプレゼンテーションが約20 分ずつ行われた。
近藤先生からは「ごみを減らして自然と健康を守る市民行動を支えるしくみと工夫」と題して、ゴミの量を減らすための地域自治体の工夫の必要性、市民団体の協力についてお話があった。特に印象的だったのは、「日本人は、昔は(ものを)長持ちさせるために良いものを買って使っていたが、現代はなんでも安くあるためものを長持ちさせる必要がなく、ゴミ・捨てることへの意識が薄れている」「日本人は、環境意識は非常に高いのに環境行動は非常に低い珍しい民族」といった言葉だった。環境行動を促すためにも、ゴミの有料化の料金設定の問題、ゴミ分別数と労力・コミュニティとの関係など、自治体の取り組み結果を織り交ぜながら、楽しくプレゼンしていただいた。
成岡先生からは「繰り返し使える廃棄物処理場をめざして」と題して、廃棄物処理場の数の限界から、処理場の再使用化の提案、含まれる塩素の問題などをお話いただいた。“燃えるゴミ”を焼却しているのに、その灰から金属や硬貨まで出てくるといった話は、改めて自分たちの分別に対する考えを正す機会になったのではないかと思う。
菅井先生からは「石から農業資材を作ってみました」ということで、秋田で行われていた研究である十和田石の採掘・製品化の際に生じる石の粉や廃材を、農業の資材として養鶏業での臭気緩和や堆肥作り、土壌改善として有効利用する活動をお話いただいた。十和田石の防カビ効果や微生物活性化効果を説明し、実際に秋田の比内地鶏の鶏舎内の環境改善効果の結果を紹介していただいた。糸島地区は、養鶏をはじめとした畜産も盛んな地区であり、参加者もかなり真剣に研究内容を聞いていたように思う。
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| 写真8 二人によるモデレーター | 写真9 アンケートパネルの結果紹介 |
今回、3人の先生方によるプレゼンテーションということで、各先生方の持ち時間が若干少なくなってしまったこともあり、少し時間オーバー気味に進行し、休憩に入った。休憩中はこれまで同様、参加者には配布資料の質問用紙に各先生方への質問や思ったコトなどを記入いただき、スタッフが回収し、随時掲示する方式で、質問が集められた。
質問の回収・集計の間、飛び込みプレゼンということで、糸島地域の皆さんへのお知らせ等が行われ、参加者自身はさほど、待たされているといった印象も無く、次の質疑までの間を待つことが出来たのではないかと思う。
質疑では、先生の趣味(プロ野球チーム)の質問から、プレゼンテーションの中で疑問に思ったことへの質問、さらには次の研究の提案といったものまで挙がっていた。「学生街のコミュニティの活性化にはどうしたらよいか?」といった質問に対して、近藤先生から「学生にあったルール(ゴミ有料額の設定など)を作る」「その地域ごとに自治体・コミュニティが活性化できるようなルールを設定することが重要」という回答があった。また「使い捨てカイロとかはリサイクルできますか?」という質問に対しては、先生方同士で、その使い捨てカイロのパッケージを見て、「鉄が多いのが気になりますが、肥料になると思いま
す」といったシーンは、参加者の身近な疑問を先生方で真摯に応えており、サイエンスコミュニケーションとして、大事な部分であったように思う。
質問はまだたくさんあったようだが、時間の関係もあり、約9つの質疑応答で今回のサイエンスキャラバンは終了した。最後に次回は来年の2 月開催予定というお知らせもあり、今回の参加者にとっても次回があるという情報を配信できたことは、持続性という意味でも良いことだと思う。
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| 写真10 今回集まった質問 | 写真11 質問に答える成岡先生 |
第2回いとしまサイエンスキャラバン2007に参加しての感想
今回のいとしまサイエンスキャラバンのテーマに「ゴミ問題」という、糸島地区に関わらず、一般の人にとって大変身近で、しかも生活と切り離せないテーマに設定したことは素晴らしい点だと思う。昨今の環境問題意識の高まりの中、家庭で出来るエコロジーの一つとしてゴミ減量は十分認識されており、そういう点でどの参加者にとっても、興味あるテーマであるといえる。また一般的なテーマに対して、それに関わる先生を3 名も集めることが出来たモデレーターの力量も素晴らしいと思う。実際、プレゼンしていただいたどの先生方の話も参加者はしっかりと公聴しており、またゴミ問題に対してひとくくりに出来
ない様々な問題、課題があることを参加者は改めて感じてもらえたのではないかと思う。
今回のテーマおよび、スピーカーの先生方のプレゼン内容は、福岡市街や他の地域でおこなったにしても、十分な反響があるテーマ・内容であったといえる半面、いとしまサイエンスキャラバンならではの地域性・特異性は、今回薄れてしまったのも事実であると思う。ただ菅井先生の研究が、今後、糸島地区ならではの廃材(牡蠣の貝殻)・農産物(竹林)を使って進められ、また近藤先生の研究である地域にあった市民・コミュニティ活動をおこなう事で、ゴミ問題が解決に近づくことで、いとしまサイエンスキャラバンならではの成果という意味が現れるように思う。
アンケートパネルの準備や前回のサイエンスキャラバンのアンケート結果の配布といったこれまでになかった取り組みも効果があると感じた。アンケートパネルは、視覚的に今回参加者の内訳を知ることができ、それは逆に参加者自身の位置を確認できるものになっており、またアンケート結果の配布も今回と前回を比較するツールとなり、参加者にとって有用であると感じた。
今回も広報に関しては、いとしまサイエンスキャラバン専用のHP をはじめ、九州大学HPなどを使い、しっかりとPR されていた。
最後にサイエンスキャラバン後の懇親会にて、(毎回の事なのだが)スピーカーの先生方が地元の人々から絶えることなく質問、話を受けている様子から「九州大学」と「糸島地域」とのネットワークがしっかりと根付いていると感じる場面であった。次回の二丈町でのサイエンスキャラバンが、今年度最後となると思うが、前回、今回と引き続き盛況であることを期待したい。
九州大学 ユーザーサイエンス機構
特任講師 江藤 信一

